中山七里さんの『帝都地下迷宮』を読みました。
あらすじ
区役所の生活保護申請窓口で勤める小日向巧は、鉄オタの中でも〈廃駅鉄〉。
職場でむしゃくしゃする出来事があった日の夜、旧萬世橋駅へ忍び込む。
誰もいないと思っていた地下空間には、〈エクスプローラ(探検者)〉と呼ばれる100人規模の集団が生活していた。
〈エクスプローラ〉の秘密を知ってしまった小日向は、〈特別市民〉として集団に入ることを許されるが、そんな矢先、〈エクスプローラ〉の一員である黒沢輝美が殺害されてしまう。
しかし、輝美は公安から〈エクスプローラ〉に送り込まれた人間だったことがわかる。
感想
〈エクスプローラ〉たちは、なぜ地下で暮らしているのか?というのが第1の疑問。
そして、地下で暮らす集団〈エクスプローラ〉と公安がどう関係するのか?というのが第2の疑問。
第1の疑問については、早い段階で答えが明かされるのですが、なんとも悲しい理由。
第2の疑問については、最終盤に明かされるのですが、その不条理が腹立たしく感じられてしまいます。
2020年に刊行された作品ですが、まさに今、中山七里さんが述べたかったテーマの岐路にさしかかっているのかな?と思いました。
ここまでくると、思想の操作と言いたくなるところですが、普段から私たちが知らず知らずのうちに受けているものの延長線上にあるだけなのかも知れません。
マスコミによる情報発信も、どちらの視点に立つかによって、発信内容が変わってくるもの。
邪魔だから排除してしまえ、というのは乱暴すぎるのかも知れませんが、物理的にではなく情報の上で排除することもできると考えれば、この話に出てくる公安と同じようなことを、私たちも知らず知らずのうちにやってしまっているのかも知れません。
鉄オタ、特に廃駅鉄の小日向が、その知識をフル活用するこの作品。
中山七里さんの知識の幅には本当に驚かされます。
オタク同士の繋がりというところに希望を見出したのも良かったのではないでしょうか。
オタク同士の繋がりしかり、職場の同僚しかり、最後に助けてくれるのはそういう人達なんだよってことを言いたかったのかな?と思いました。
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