【読書】知念実希人『レゾンデートル』

知念実希人 ├ 知念実希人

知念実希人さんの『レゾンデートル』を読みました。

あらすじ 

時効や精神喪失、少年法などにより、刑罰を与えられなかったり、軽い刑罰しか与えられなかった犯人の首をナイフで切り裂き、現場に「R」と書かれたトランプのジャックを残す殺人鬼、〈ジャック〉が犯行を重ねていた。
一方、医師の岬雄貴は、友人の医師に胃カメラの検査を依頼したところ、ステージ4の癌がみつかる。
その日から酒浸りになった雄貴は、コンビニに酒を買い出しに行った際に2人組の不良から暴行を受ける。
雄貴はサバイバルナイフを持ちだして2人に復讐を果たすが、現場には「R」と書かれたジャックのカードが残されていた。

感想

新人賞を『レゾン・デートル』で受賞。
単行本出版時には『誰がための刃 レゾンデートル』に改題されたのですが、文庫化される際に再び『レゾンデートル』に戻されたというちょっと面白いエピソードを持った作品です。
私自身も、「誰がための刃」よりも、「レゾンデートル(存在理由)」の方がぴったりくるんじゃないかなって思いました。

自らも医師である知念実希人さん。
その強みが充分に発揮された作品だと思います。
ちょっと専門的すぎて、よくわからない言葉もありましたが、医師が患者に説明するように、言葉を選んで書かれているように感じました。

物語は、主な登場人物たちによって、交互に語られていく形で進んでいきます。
「もうこの人は絡んできて欲しくないなぁ」と思う人もいるのですが、絶対に後で絡んでくることがわかってしまったり。
まぁ、「平穏無事に終わりました」では、面白みに欠けてしまうんでしょうが、ついつい岬雄貴たちに肩入れしたくなってしまいます。
そのあたりも、知念実希人さんの筆力なんだろうなぁと感じました。

かなり面白い作品だと思うのですが、最後に意外な犯人を作りあげた方法については、あまり好きじゃないかなぁと感じました。
説明されれば納得なのですが、捻っているようで捻れていなかったのか、捻りすぎていたのか…
正直「うーん」って印象を受けました。
でも、それを込みにしても、1度読む価値がある作品だと思います。

コメント

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