中山七里さんの『もういちどベートーヴェン』を読みました。
あらすじ
司法試験をトップで合格した岬洋介は、座学4ヶ月、実務12ヶ月からなる司法修習生の修習を行うため、埼玉県和光市司法研修所に入所した。
寮の隣の部屋に入居した天生高春とは、修習を受けるグループも同じになり、一緒に行動する機会が増える。
天生は岬をクラシックコンサートに誘うが、岬は途中で席を立ってしまう。
検察での実習の中で、絵本作家の夫を絵本画家の妻が殺害した事件に出会うが、岬は起訴内容に疑問を抱く。
感想
「岬洋介シリーズ」の5作目です(サイドストーリーである『さよならドビュッシー前奏曲 要介護探偵の事件簿』を含めると6作目)。
刊行順は、『さよならドビュッシー』、『おやすみラフマニノフ』、『いつまでもショパン』、『どこかでベートーヴェン』、本作となりますが、時系列で並べると、『どこかでベートーヴェン』、本作、『さよならドビュッシー』、『おやすみラフマニノフ』、『いつまでもショパン』という順になります。
※「岬洋介シリーズ」は、このあと『合唱 岬洋介の帰還』、『おわかれはモーツァルト』と続きます
『さよならドビュッシー』は、第8回『このミステリーがすごい!』大賞の大賞を受賞し、中山七里さんが作家デビューを果たした作品。
言わば、コンテスト狙いの作品ですね。
そのため、比較的地味な岬洋介の子供時代を描いた『どこかでベートーヴェン』などが後付けになった形になっていると思われます。
この作品は、岬が司法試験をトップ合格し、司法修習生として修習を受ける場面からスタートするわけですが、シリーズを順に読んできた者としては、このあと岬がピアニストを目指すことがわかっているわけです。
いわば、オチがわかっている話を聞くようなもの。
その転換点がどこにあるんだろうなぁと頭の隅で考えながら読むことになりますが、その転身の見事さ、きっかけ作りなどが実によく計算されています。
また、裁判の開始を待つばかりとなった夫殺しの事件の真実を、岬がどう明らかにするのかという謎も並行して走り、ミステリとしての面白さも醸し出しています。
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