宮部みゆきさんの『希望荘』を読みました。
あらすじ
介護施設〈はなかご老人ホーム〉に入居していた武藤寛二が、ランニング中の女性が殺害された事件を報じるニュースを見ながら、犯人はそんなつもりはなかったんだけど、つい頭に血がのぼって、手を出しちまったんだ。俺はよく知ってる。と話していた。
武藤の死後、息子の相沢幸司は、武藤が生前事件を犯していたのではないかと心配し、杉村三郎に相談する。
感想
前作『ペテロの葬列』で今多コンツェルンの会長令嬢と離婚。今多コンツェルンも辞職するという衝撃の人生のターニングポイントを迎えた杉村三郎ですが、次に選んだ道は私立探偵。
これまでのシリーズ作品を読んでいれば、その伏線に気づかれたことと思いますが、ひょっとして、もっと違う道を選ぶのでは?という期待もありました。が、まずは順当な道を選んだのかなぁといった感じです。
これまでは、自らが事件に巻き込まれることが多かった杉村ですが、今回は他人が関係する事件の真相を確かめる役割。
緊迫感にこそ少々欠けるものの、安定感は抜群ですし、杉村の推理力を堪能することができます。
ただ、この先、杉村がどうなっていくのかな?と考えると、上がることも下がることもない、比較的単調な生活になってしまうのではないかと、危惧してしまいます。
表題作のほか、『聖域』、『砂男』、『二重身』が収められています。
『聖域』
杉村が事務所兼住居を構える古家の近くに建つ単身者用アパート〈パステル竹中〉の住人・盛田から相談があった。
春に亡くなったはずのお年寄り・三雲勝枝が、若い娘に車椅子を押されながら散歩していたという。
勝枝は娘に財産を搾り取られ、身一つで〈パステル竹中〉へ引っ越してきていた。
『砂男』
妻・菜穂子と離婚した杉村は、実家のある山梨県へ戻った。
地元の市場で働いていたところ、そばとホウトウを出す店〈伊織〉の主人が駆け落ちしてしまった。
杉村は、調査会社を経営している蛎殻昴の手伝いで、伊織の主人と駆け落ちした相手の調査を手伝うことになる。
『二重身』
東日本大震災で、事務所兼住居が文字通り傾いてしまった杉村は、家主の竹中の屋敷の片隅を借りることになる。
そんな杉村の前に、シングルマザーの母親の交際相手・昭見豊の行方を捜して欲しいという依頼が舞い込む。
昭見は震災の前、東北地方にアンティークの買い出しに出かけたまま行方不明になっていた。
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