中山七里『さよならドビュッシー前奏曲 要介護探偵の事件簿』

中山七里さんの『さよならドビュッシー前奏曲 要介護探偵の事件簿』を読みました。

 

 

『要介護探偵の冒険』
建築士の烏森健司が殺害された。
烏丸は、不動産会社の社長・香月玄太郎が売った土地に建築中の戸建て住宅の中で絞殺されていたが、現場は密室だった。
殺人犯が近所に住んでいるかもしれないということで、周辺の住宅の購入を渋る客が出てきたため、玄太郎は自ら事件解決に乗り出す。

『要介護探偵の事件簿』として発売されたものを改題して文庫化されています。
シリーズとしては、「岬洋介シリーズ」の1冊となっていますが、この作品のメインは岬洋介ではなく香月玄太郎。
「岬洋介シリーズ」に香月玄太郎が出てきたのは1作目の『さよならドビュッシー』の序盤のみなので、サイドストーリーというのにもちょっと無理があるような…
作品を通じて、玄太郎から岬洋介に探偵役がバトンタッチされ、『さよならドビュッシー』に繋がる終え方をしているので、やはり「前奏曲」というのがぴったりくると感じました。

ちなみに、香月玄太郎は、脳梗塞で倒れたあと下半身が不自由になり、車椅子での生活。
安楽椅子探偵ではなく、車椅子探偵、でもなく、介護が必要なので要介護探偵なんだそうです。

作品を時系列で並べるのではなく、まず『要介護探偵の冒険』で玄太郎の人となりを知らしめたあと、玄太郎が倒れ、リハビリを行った様子を描いた『要介護探偵の生還』を配したのは見事だと思いました。
正しく時系列に並べるのであれば、『要介護探偵の冒険』は4編目と5編目の間に来ることになりそうですが、その順番に読むことは、中山七里さんが意図したものではないと思われます。

少し気になったのは、玄太郎の髪の毛が白髪だったり、スキンヘッドだったりするなど、細かいところでうーんと思う所がいくつかあったところ…
髪の毛の件に関しては、単行本から文庫にする際の加筆修正で直せそうなものですが、誰も気づかなかったのでしょうか。

『要介護探偵の冒険』の他、『要介護探偵の生還』、『要介護探偵の快走』、『要介護探偵と四つの署名』、『要介護探偵最後の挨拶』が収められています。

『要介護探偵の生還』
企業の社長を務める香月玄太郎が脳梗塞で倒れた。
介護士として雇われた綴喜みち子は玄太郎をリハビリテーションセンターへ連れて行くが、そこで歩行訓練をしている領家壮平の頑張りが、通院者たちに勇気を与えていた。

『要介護探偵の快走』
玄太郎が暮らす町内で、お年寄りが後ろから来た自転車の男性に突き飛ばされる事件が連続して発生した。
玄太郎は、町の小学校の運動会で行われる老人会の玉入れを、障害者と後期高齢者による車椅子競走に置き換えることを提案する。

『要介護探偵と四つの署名』
玄太郎は現金を引き出すために銀行のATMへ立ち寄った。
しかし、その日は14時半からの計画停電に備え、14時で閉店する日。玄太郎が銀行に到着したのはその5分前だった。
そして、14時の閉店直前、4人の強盗が行内に侵入してきた。

『要介護探偵最後の挨拶』
国民党愛知県連代表の金丸公望が殺害された。
金丸と子供の頃からの付き合いがある玄太郎は、音大講師の岬洋介とともに金丸殺害の犯人を追う。

 

 

 

 

 

過去の「中山七里」記事

 

 

 

過去の「岬洋介シリーズ」記事

 

 

 

 

 

にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村

 

coralの読書記録 - にほんブログ村

 

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました