中山七里さんの『七色の毒』を読みました。
あらすじ
『赤い水』
岐阜県可児市と新宿を結ぶ高速バスが、高井戸インターチェンジ付近で防護柵の継ぎ目に突き刺さる形で激突した。
バスは左側を大きく損傷。乗客9人のうち、死者1名、負傷者8名を出す惨事となった。
しかし、警視庁捜査一課の犬養隼人は、事故直後にカメラに向かって頭を下げる運転手に不自然なものを感じていた。
感想
「刑事犬養隼人シリーズ」は、『切り裂きジャックの告白』以来だったのですが、こちらは短編。
短編はあまり好きではないのですが、この犬養の魅力に限って言えば、長編よりも短編の方が生きるんじゃないかなぁと思って、この作品を手にしたのですが、予想的中。
犬養の魅力が詰まった1冊になっていました。
事件の裏にある人間臭い物語だとか、さらにその裏にある人間模様というのが、何とも言えない後味を醸し出しているなぁと思いました。
『赤い水』の他、『黒いハト』、『白い原稿』、『青い魚』、『緑園の主』、『黄色いリボン』、『紫の献花』が収められています。
『黒いハト』
男子中学生がいじめを苦にして学校の屋上から飛び降りた。
校長らがいじめはなかったとして保身に走る一方で、警察による捜査は着々と進み、自殺した男子中学生を中心になっていじめていた生徒らが補導される。
『白い原稿』
公園脇のベンチで桜庭巧巳の死体が見つかった。
桜庭は20代半ばのロック歌手だったが、ビブレ大賞という文学賞に応募。見事大賞を受賞していた。
しかし、ビブレ大賞の受賞はやらせだという噂が付き纏い…
『青い魚』
恋愛沙汰とは無縁だと思っていた釣具屋の主人・帆村亮は、ついに現れた婚約者の本橋恵美と兄の由紀夫を連れてハギ釣りに出る。
しかし、船上で帆村は何者かに襲われて、海に転落する。
『緑園の主』
中学生が毒入りのおはぎを食べさせられて死亡した。
しかし、その被害者は、河川敷をねぐらとするホームレスに暴行を加えた上、放火した少年グループの中心的人物だった。
『黄色いリボン』
小学校4年生の桑島翔は、体と心の性別が違う性同一性障害者。
1日に1度だけ、ミチルという女の子になることを許されていたが、公園で黒ずくめの男から「ミチルちゃん」と呼びかけられたり、桑島ミチル宛のダイレクトメールが届いたりするようになった。
『紫の献花』
岐阜県多治見市でタクシーの配車担当者が殺害された。
被害者は『赤い水』で事故を起こしたバス会社の元運行管理者だった。
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