米澤穂信さんの『黒牢城』を読みました。
あらすじ
織田の軍勢が東から迫る中、大坂から北に歩むこと半日の伊丹の里には、有岡城が築かれていた。城主は荒木摂津守村重。
その有岡城に、織田方の使者・黒田官兵衛が遣わされ、村重に「この戦、勝てませぬぞ」と言い切る。
村重は官兵衛を斬ることもせず、帰すこともせず、地下牢に留め置く。
そして、村重の手に負えない厄介ごとが起きたとき、村重は官兵衛の知恵を借りる。
感想
2021年下半期の直木三十五賞を受賞した作品。
なんとか年内に読むことができました。
物語の舞台は戦国時代。
東から勢力を伸ばしてくる織田軍に対して、毛利の援軍を待ちながら有岡城で牢城戦を挑む荒木摂津守村重が描かれています。
人質の殺害事件、戦の手柄争い、密使の暗殺事件など、城内で起きる厄介ごとに、城主である村重が挑んでいきます。
この村重、かなり頭が切れる人物なのですが、それでも謀反人を明かすことができず、ピンチに。
そこで、地下牢に閉じ込めている黒田官兵衛の知恵を借りるというストーリーです。
黒田官兵衛は、NHKの大河ドラマになったことでも知られる知将。
村重の話を聞いただけで、事の真相を突き止めてしまいます。
その答えを簡単に村重に授けるのではなく、村重ならギリギリ真相に辿り着けるようなヒントを与えるだけ、というところが、この作品を面白くしているポイントの1つだと思います。
物語は大きく4つの事件から成り立っていて、1つ1つの事件を見ているだけだと、確かに面白いけど、直木賞を取るほどかなぁ?という思いが…
しかし、第4章の終盤から、たたみかけるようにして明らかになる各登場人物の思惑、というか謀が、物語を盛り上げていきます。
二重にしかけられた罠に、まんまとはまってしまったといった感じです。
米澤穂信さんの作品は、これまで「古典部シリーズ」や「小市民シリーズ」、『ボトルネック』など、現代を舞台にした作品ばかりを読んできたため、あまりの変貌っぷりに驚いてしまいました。
舞台を戦国時代に移しただけでなく、言葉も時代物に。
これには、かなりの知識を要したのではないかと、今さならながら米澤穂信さんの才能に驚かされました。
時代物を読み慣れない私には、ちょっと読むのが辛かったですが、十二分に楽しむことができました。
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