赤川次郎さんの『死者におくる入院案内』を読みました。
『〈外科〉霧の夜の忘れ物』
霧が立ちこめた夜、郊外の団地の敷地内で、帰宅中の女性・山野久代が何者かに襲われた。
久代は下腹部を切り裂かれた状態で、翌朝発見された。
同じ団地に住む井上洋子と久代は4年前の同じ日に、同じ病院で盲腸の手術を受けていた。
ロンドンには霧が似合うなんて言いながら、切り裂きジャックを読者に連想させるあたりがうまいなぁと思います。
読み進めていくうちに「霧の夜の忘れ物」の正体に気づいていくのですが、そこはあまりリアルに考えない方が良いかもしれません。
犯人に意外性があったような、なかったような…
短編なので限界があるような気もしますが、忘れ物が忘れ物だけに、もっと意外な人物を犯人役にしても良かったかも?
ただ、あまり凝りすぎるのも良くないので、なかなか良い落とし所だったのでしょうか。
その他、『〈外科〉霧の夜の忘れ物』の他、『〈小児科〉スターのゆりかご』、『〈眼科〉美しい闇』、『〈精神科〉殺人狂団地』、『〈産婦人科〉見知らぬ我が子』、『〈放射線科〉残された日々』、『〈法医学教室〉明日殺された男』が収められています。
『〈小児科〉スターのゆりかご』
畑中正宏の5歳の娘・サト子は、今をときめく子役。
その畑中が勤める会社に、サト子がもらった役はうちの子がもらうことになってたんだ!と、女性が乗り込んでくる。
『〈眼科〉美しい闇』
円山礼美は10歳の時に失明したが、角膜移植を受けることになった。
手術の3ヶ月前、礼美は殺人事件の目撃者になっていた。
その時の犯人の息づかいや足音をもとに、被害者の知人から疑わしい人物を特定しようとするが…
『〈精神科〉殺人狂団地』
今村弘子は新しく建設された団地に引っ越してくるが、説明会の時に顔見知りになった夫婦の姿が見当たらない。
さらに、団地の近所で身元不明の男女の遺体が発見されたとのニュースが流れる。
『〈産婦人科〉見知らぬ我が子』
作家の三宅は、三宅の子だという女の子を連れた女性の訪問を受けるが、三宅には心当たりがない。
偶然レストランで顔を合わせた作家仲間から、あの女は自分のところにも来たと注意を促されるが…
『〈放射線科〉残された日々』
16歳の伊坂美奈は、ガンで3ヶ月の命と診断された。
美奈は余生を好きなように使いたいと旅に出た先で、会社の金を横領した上、管理人の男性を殺害してしまった男と知り合う。
『〈法医学教室〉明日殺された男』
法医学の権威である沼田市郎のもとを、アフリカの原住民が使う毒を盛られ、明日死ぬことになると言う男が訪ねてきた。
沼田は話を聞いて男を帰すが、翌日、本当にその男が死んでいるのが発見された。
過去の「赤川次郎」記事
コメント