中山七里さんの『切り裂きジャックの告白』を読みました。
警視庁の刑事・犬養隼人には、別れた妻との間に一人娘の沙耶香がいたが、沙耶香は重い腎臓の病気で、人工透析を受けながら臓器移植を待っていた。
一方、深川警察署と目と鼻の先にある木場公園で、若い女性が絞殺された。
女性の腹部は切り開かれ、主立った臓器は持ち去られ、ジャックを名乗る人物から報道機関に犯行声明が送られた。
さらに、第2、第3の事件が発生する。
はじめて中山七里さんの作品を読みました。
まず、切り裂きジャックと臓器移植を並べたところに感心しました。
19世紀に死体から臓器を取り出したのは切り裂きジャックで、現代において死体から臓器を取り出すのは医者。
一方は悪人で、もう一方は善人。
この対比がシンプルなんだけど、目からウロコ的な発想だなぁと思いました。
脳死による臓器移植について、賛成派と反対派に別れて議論が行われるシーンもありましたが、臓器移植法制定時に散々議論されたことをもう1度持ち出して、どういう結論に持ち込むのかな?ということを考えながら読ませていただきました。
反対派の意見に同調するのは簡単なことですが、安直なような気もしますし、賛成派の意見に傾くのは勇気のいることじゃないかなぁと。
最終的に、どちらが、という話にはなりませんでしたが、そこに事件を解く鍵が隠されていたりと、読んでいて常に頭が回転している気がする作品でした。
最後に辿り着く意外な犯人と、犯行の動機については、ちょっと無理矢理感があるかなぁと思いきや、さらにもう1転。
満足度の高い作品に仕上がっていました。
ぜひもう1冊、中山七里さんの作品を読ませていただきたいと思います。
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