赤川次郎さんの『幽霊認証局』を読みました。
警視庁捜査一課警部の宇野喬一と大学生の永井夕子が温泉街の駅に降り立つと、「千の目の町へようこそ」のパネルが。
町長の弓削が、娘が誘拐されたのを教訓に、街中に防犯カメラを設置したらしい。
しかし、事実は誘拐ではなく駆け落ちで、死んだはずの相手の男性・尾形が町に戻ってきたと関係者が騒ぎはじめる。
夕子といるとのんびり湯につかっていられないという宇野警部の言葉がしみじみと伝わってきます。
赤川次郎さんのシリーズキャラクターは数あれど、殺人事件を呼び起こす力が群に抜けている永井夕子と付き合っていく以上、避けられないことなのかも知れません。
さいごにある夕子の台詞「どんなに高性能なカメラでも、事実は映せても、真実は映せないのよ」という言葉が良いなあと思いました。
監視カメラを増やすだけでは、ただのハリボテ。それをどう活用していくかが重要なんだということを、逆説的に記した作品なのかなと思いました。
表題作のほか、『隣の芝生が枯れたとき』、『失われたハネムーン』、『死を運ぶサンタクロース』、『他人の空似の顔と顔』、『女ともだち』、『タダより怖いものはない』が収められています。
『隣の芝生が枯れたとき』
尾形美智代の夫・久男は、父親が社長を務める〈S商事〉の営業部長。
友人の水上治子が刃物で背中を刺されて殺害されたが、美智代と治子の間には、金のブローチの偽物を掴まされるというトラブルがあった。
『失われたハネムーン』
夕子と旅行に来た宇野警部は、かつての部下・実吉小夜子とばったり。
その小夜子は、以前の交際相手でハネムーン中の甘利徹とばったり出会ってしまう。
『死を運ぶサンタクロース』
くじ運がない横田美佐子がサンタクロースが持つくじを引くと大当たり。
毛糸の大きな靴下の中に入っていた景品は、なんと拳銃だった!
『他人の空似の顔と顔』
宇野警部は公園でばったり高校の同級生・村川里香と再会。
里香は、息子の眉の形が以前交際していた男性とそっくりだったことから、夫との仲がうまくいっていなかった。
『女ともだち』
小山信忍と田ノ倉初が立ち上げたファッションブランド〈HATSU〉は、20年で大きく育った。
しかし、信忍は母親の介護のため離職した日、信忍の部屋が火事になり、焼け跡から母親の刺殺体が発見された。
『タダより怖いものはない』
岩下尚子はマンションで夜勤のガードマンをしている女性。
そのマンションには画家の中林剛士が住んでいたが、絵画教室で才能のある若い女性を見つけると、《個人指導》をすることで有名だった。
過去の「赤川次郎」記事
過去の「幽霊シリーズ」記事
コメント