赤川次郎さんの『明日死んだ男 怪異名所巡り10』を読みました。
俳優を目指す野沢厚子は、コンパニオンの仕事で丸山貴広という老人と出会った。
丸山は、私の願いを聞いてくれれば、一生暮らしていけるようにしてあげると前置きした上で、自分を殺して欲しいと依頼してきた。
厚子は最終的に丸山の願いを聞いて、首を絞めてしまった。
そして、ふらふらとホテルから出てきたところを、〈幽霊と話せるバスガイド〉町田藍と、そのお得意様の遠藤真由美に見つかった。
厚子は以前、真由美の家で住み込みのお手伝いとして働いていた。
なんとも変わったタイトルである。
本来、「明日死ぬ男」とすべきところを、「明日死んだ男」としたのは、誤植なのだろうか…というところではなく、「明日死ぬ」ということは、当然今は生きているということ。
つまり、生きている人間であれば、藍の”お客様”にはならないはずです(本来のバスガイドとしての”お客様”にはなるかもしれませんが…)。
6編の短編が収められていて、そのほとんどの話に共通することなのですが、今回はあまり幽霊が出てきません。
藍曰く、それよりもっと怖い生きている人間の怨念だとか怨み、欲望などが渦巻いている話が多くなっています。
〈幽霊と話せるバスガイド〉としての活躍は控えめなものの、人間が抱えている怨みなどを解きほぐしていくという意味では、味わい深い作品に仕上がっています。
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