赤川次郎さんの『恋する絵画 怪異名所巡り6』を読みました。
子育てが一段落して、カルチャーセンターの絵画教室に通う辻井芳子は、展覧会を見に行った美術館で、1枚の若い男の肖像画に目を引かれた。
自宅に帰った芳子が寝室へ入ると、壁には先ほど美術館で見た肖像画がかかっていた。
テレビで肖像画の盗難事件を報じるニュースを見た芳子は、娘の敦子とともに肖像画を公園に置いてきたが、自宅に帰るとまたしても寝室の壁に肖像画がかかっていた。
敦子の友人の遠藤真由美から相談を受けた、〈幽霊と話せるバスガイド〉町田藍は、肖像画に危険なものを感じる。
いつもながら、安定の出来栄えといった感じです。
この長さ、このテンポが私好み。なんでこれまで読んでこなかったんだろうって思いながら読んでいます。
時々藍が口にする、幽霊はめったに悪いことをしない。幽霊は被害者なんだって言葉が好きです。
推理小説では、何の痛みも伴わずに人が死んでいきますが(当たり前ですが)、死にきれなかった幽霊とは、対をなす関係にあるのかなぁと思ってしまいます。
今回の『恋する絵画』というのはちょっと変わった話。
幽霊が現れたり、ポルターガイストのような現象が起きたりといったことはこれまでもありましたが、絵画に潜む霊が恋をして、絵画ごと追いかけてきてしまうというのはこれまでになかったパターンかと思います。
それだけに、どう結末を書こうか悩んだのか、ちょっと腑に落ちない終わり方でもありました。
でも、作品が持つ神秘性と相まって、それほど気にはならなかったかなぁって感じです。
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