赤川次郎さんの『吸血鬼のための狂騒曲』を読みました。
あらすじ
トランシルバニアから日本に亡命してきた吸血鬼、フォン・クロロックと日本人の間に生まれた神代エリカは、大学の親友、大月千代子と橋口みどりとともに、水村祐子の別荘に遊びに来ていた。
その別荘の敷地内にある池で、祐子の従姉妹、谷田美保が溺れているのを、クロロックが救助した。
クロロックは、現場から立ち去っていくボートを見たという。
同じ頃、精神科の病棟から、自分がドラキュラだと思い込んでいる男が逃げ出した。
診療所の医師が、ドラキュラ伯爵そっくりの外国人を見かけたという話を耳にして、まだ見ぬ父に会いに行こうとしたらしい…
感想
「吸血鬼エリカシリーズ」の第4弾です。
トランシルバニア出身で生粋の(?)吸血鬼であるクロロック。超人的な能力を発揮して美保を助けたりと、格好良い場面も用意されているのですが、どちらかというと、息子にデレデレだったり、妻に頭が上がらなかったり、マントがなくなってしゅんとしていたりと、吸血鬼らしくない(?)場面が多いような…
まぁ、これは、血を見ると貧血を起こしたり、女性に弱い片山刑事や、警官だけどいつも恋人に助けられている宇野警部、井上刑事、国友刑事など、赤川次郎さんの作品に登場する男性キャラクターに共通して言えることなんですが。
本来「強い」はずの吸血鬼や警官を、「弱く」書くところがヒロインを引き立てる効果を生んでいて、上手いなって思ってしまいます。
その「ヒロイン」ですが、冴えた推理力を発揮する名探偵だったり、活発で男勝りな女性だったりするわけですが、このシリーズのヒロインであるエリカは、吸血鬼と日本人のハーフ。
父のクロロックほどではないものの、人間離れした五感や身体能力を発揮するのが、見所の1つだったりします。
この作品でも、まんがの中の世界のような超人的な能力を発揮する場面が用意されています。
きっと、赤川次郎さんも書いていて面白いんだろうななんて思ったり。
そんな遊び心たっぷりの作品ですが、それなりに締まるところは締まっていて、楽しめます。
ただ、良くも悪くも「赤川次郎さんのパターン」にはまってしまっているところがあって、「よくあるパターン」と思ってしまうかもしれません。
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