赤川次郎『森がわたしを呼んでいる』

赤川次郎さんの『森がわたしを呼んでいる』を読みました。

母が出張で留守の夜、渡部佐知子はドスンという音で目が覚めた。
父を自身で亡くしていたので、揺れに敏感なのだ。
翌朝玄関を出ると、家の周りの雑草がいやに伸びているのに気づく。
そしてその夜、妙な音が続いたと思ったら、家の周りが突然森になっていた。
近所の人が不審な死を遂げ、母の梨江には突然大きな仕事が、そして佐和子は死んだはずの人間の声が聞こえるようになる。

うーん、ちょっと無理があるかなぁといった印象でしょうか。
一夜にして突然近所が森の中になってしまったり、死者の声が聞こえるようになったり…
最終的にそのすべてに対して、一応の説明をつけているのですが、むしろ説明がつかないままにしておいた方が良かった事柄もあったのではなかったかと感じました。

赤川次郎さんが時々書く、国家のために国民が犠牲になるという話なのですが、住宅街が一夜にして森に飲み込まれるというところからはじまっているため、現実と非現実の境目がよくわからなくて、作品のテーマも少し掴みづらかった気がします。
終盤で「森の力」が及ぶ範囲が曖昧になってしまっていたり、登場人物を十分に活かし切れていないように感じたりと、ちょっと不完全燃焼な作品でした。

ヒロインの佐和子は、13歳という設定。
赤川次郎さんは、高校生くらいの年代の女性をヒロインに用いることが多いですが、それより明らかに低い年齢設定です。
その13歳という設定をうまく活かしている場面もあるのですが、佐和子の「大人の対応」を見ていると、もう少し年齢を上に設定しても面白かったのではないかなと思いました。

ちょっと残念な印象を持ちながらエピローグ(最終節)を迎えたのですが、そこで明かされた「秘密」にはちょっと驚かされました。
作品の内容には何の関係もないような「秘密」なのですが、これによって読み終わったあとの気分ががらりと一転。
お口直しの一品のようなこの数行を、どうやった思いつくのだろうと、不思議でなりません。
 

 

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