赤川次郎『昼と夜の殺意』

赤川次郎さんの『昼と夜の殺意』を読みました。

ピアニストを目指す水城澄音と、ヴァイオリニストを目指す韻子(かずこ)は、腕の病気によって自らのピアニストとしての生命が絶たれてしまった、母・貞子からの英才教育を受けて育った。
私生活は自由奔放な澄音に対し、音楽以外に関してはうぶな韻子。
そんな韻子に結婚を申し込んでいた栗崎の出張先である札幌に、澄音にもらった航空チケットを使って飛んだ韻子だったが、そこで見たのは栗崎のベッドから起き上がる、裸の澄音の姿だった。

札幌から帰ってきた韻子は、音楽教育界の大物・上尾浩三郎に師事することになる。
さらに、日本の若手が集まった四重奏団では一番の杉本カルテットのオーディションの話が舞い込む。
しかし、貞子に反発した韻子は、大学の同級生・水木を頼って家出するが、翌日迎えに来たのは貞子だった。
吹っ切れたように、ヴァイオリンの練習に励む韻子だったが、水木がラブホテルの部屋で殺害されているのが発見される。

自分が叶えられなかった夢を娘たちに託し、ただひたすらに音楽家への道へ進ませようとする母。
天賦の才能を活かし、優秀な成績を収めつつも、私生活がだらしない姉。
自分の才能に限界を感じつつも、音楽一筋に歩んできた妹。
価値観の違いが、時に対立を生み、時に調和を生み、その間で揺れる心の動きが上手く表現されています。

一見、自由奔放でだらしなくも見える澄音の男性関係。妹の彼氏にまで手を出して…とも見えるのですが、韻子に対して「あなたが愛した男は、こんなくだらない男だったのよ」と、姉として助言しているようにも見えます。
他にもやり方が…と思うのですが、澄音と韻子の性格からすると、これが1番効果的なのかも。
水木という男に関係して、澄音も韻子も、1段成長したように見えるのは、やはり姉妹だからなのでしょうか。

赤川次郎さんが得意とする音楽に関する作品ですが、中心は人の心の動きだったでしょうか。
結末が少々消化不良な感がありましたが、これはこれで、考えさせられる話になっていたような気がします。

 

 

 

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