赤川次郎さんの『壁の花のバラード』を読みました。
デパートに勤める伊原有利は、目立たなく、いつもパーティでは壁の花。
そんな有利に、ダンスを一緒に踊って欲しいと、男性が声をかけてきた。
少し色白だが、気品のある青年。少し年下かも知れないが、着ている服も、物腰も上品な二枚目である。
踊るのが下手だと言いながら、その男性とのダンスを楽しんだ有利だったが、そのダンスの相手は、なんと幽霊だった!
パーティの出席者の中で、その幽霊・沢本徹夫のことを見えるのは、有利だけのようだ。
沢本は、「僕を殺した犯人を見付けてほしいんです」と有利に頼んできた。
赤川次郎さんの作品には、幽霊が登場する作品が少なくありませんが、幽霊の存在を読者が自然に受け入れてしまうところが、まず凄いところ。
幽霊だとか、吸血鬼だとか、天使だとか、悪魔だとか…
そういった非現実的なものを、違和感なく作品に取り込んでしまう取り込んでしまうのですから。
そして、有利にしか見えない沢本とのやりとりで、さりげなく笑いを誘ってみたりと、小道具としてもうまく使ってしまいます。
今回の作品は、幽霊である沢本のことを有利が見えたために、事件に巻き込まれてしまったわけですが、沢本が幽霊でなくても、成立するような話になっています。
幽霊を物語に登場させるには、それなりの労力をかけているのでしょうが、その割には”幽霊だからこそ”という部分が少ない。
なんだか、もったいないなぁという気がする反面、やっぱり、幽霊がいたからこそのあの雰囲気だったのかなぁと、いろいろ考えさせられる話でした。
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