赤川次郎さんの『校庭に、虹は落ちる』を読みました。
高校1年生の朝野さつきは、つらい経験が原因で、過去の記憶を閉じ込めていた。
学校で起きたことは記憶からすぐに拭い去られ、なぜか走ることを頭が拒否する…
転校初日、道に迷ったさつきを学校に案内したのが、陸上部のエース・畑山啓介だった。
畑山も、過去の経験がもとで学校から足が遠のいていた。
さつきの登場が面白くなかったのは、畑山と恋仲だった永田由布だった。
また、さつきを担任することになった市橋涼子は、体育教師の中本と不倫関係にあったが、中本が倒れたことで涼子の立場も変わってきてしまう。
登場人物たちが、自分の行く手を遮る障壁に、正面から対峙していく。
障がいや病気の使い方があまり好きではないな、と思いながら読んでいたのですが、中程まで来て、赤川次郎さんの狙いがわかってきました。
時に社会へのメッセージ性が強い作品を書くことがある赤川次郎さんですが、この作品もその中の1冊だと言えるのではないでしょうか。
世間体や、うわべだけの正義ではなく、人としてすべきことがこの作品に書かれていたような気がします。
この作品を読んでいる途中、私の頭の中には過去に見た、遅刻して来た生徒たちが校門のところで並べられている姿が浮かんだのですが、本来教師がすべきことは、遅刻した生徒の名前を控えることではなく、早く教室へ行かせることなのではないかと思いました。
この作品の最後のページで、赤川次郎さんと同じような思いを共有できて、個人的にはとても満足でした。
「正義について考える」と言うと、ちょっと大袈裟ですが、美しく着飾った表面ではなく、ものの真髄を見ることの大切さを改めて考えさせられる作品になっていると思います。
難しいことはなんだけど、ちょっと考えさせられる作品を読みたいな、という方にオススメです。
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