赤川次郎さんの『狐色のマフラー〈杉原爽香48歳の秋〉』を読みました。
爽香が勤める〈G興産〉では、他企業との合併話が持ち上がっていた。
どうやら社長の田端将夫の秘書で愛人と噂される朝倉有希が1枚噛んでいる様子。
将夫の母で経営にも大きな影響力を持つ真保のお気に入りである爽香にも、何やら裏から手が回ってきている様子…
一方、爽香が部下の久保坂あやめと訪れた美術館では、幽霊騒動が起きていた。
閉館後の美術館を練習場として使用する声楽家や、ヴァイオリニストの卵たちは、爽香の恩師の娘で、今や世界的なヴァイオリニストの河村爽子と組むピアニスト・並木真由子の伴奏でコンクールに挑むが、それぞれに事情を抱えていた。
年に1度、「杉原爽香シリーズ」を手にするときは、私にとって特別な時間です。
毎年9月に新刊が発売され、登場人物たちが1歳ずつ歳をとっていく…
そんな、赤が次郎さんの数あるシリーズ作品の中も、ちょっと変わった位置づけにある作品ですが、このシリーズはそれ以上のものを自分に与えてくれるような気がします。
毎年発売日に新刊を手に取って読み出すのですが、はじめは記憶を呼び起こす作業が必要です。
34作というシリーズの長さもありますが、他のどのシリーズよりも登場人物が多いのが特徴。
過去の人の繋がりが、最新作にまで繋がっているので、この人はどういう人だったんだっけ?という記憶の掘り起こしが必要になるんです。
1度、全部を読み返そうかなぁと思ったりすることもあるのですが、長いよなぁとか、『暗黒のスタートライン』あたりももう1度読むのか…と思うと、なかなか触手が動きません。
あと、昔の作品を読むと、当時の自分に関する記憶も蘇ってきそうで…
それほど、このシリーズは私の人生と深い繋がりがあるものになってしまっています。
このシリーズがそれほどまでに私の気持ちを引きつけるのは、杉原爽香の人間性にあるのではないかと思っています。
毎年同じように歳をとりながら、爽香の半生を見てきたことになると思うですが、人生山あり谷あり…どころではなかったのは、このシリーズを読んでこられた方ならわかると思います。
天国は見ていないかも知れないけど、下の方はそれこそ地獄の淵まで経験してきた爽香です。
でも、その爽香をいつも支えてくれたのは周りの人間で、その人たちを呼び込むのは爽香の人間性なわけです。
そんな小説の中の爽香の人間性に、私自身が惹かれてしまっていることを実感します。
あとは、爽香たちのプロ意識。
私だって、何かのプロであるという意識はありますが、爽香やその周りの人たちを見ていると、自分のプロ意識というのは中途半端なものなんだなって思わされます。
そういった爽香の人間性やプロ意識に年に1度出会うことで、自分の気持ちを引き締めているのかな?って思います。
そんな、周りに人が集まってくる爽香だからこそ、登場人物が多くなってしまい…と、最初の話に戻ってしまうのですが。
ただ、1度それなりの付き合いをした人とは、その後の人生でもなかなか縁が切れないという点は、実際の人生に近い話だと思うんです。
その事件の時だけの付き合いってわけじゃなく、その時の出会いが後々の自分の人生に影響してくるって、理想的な話じゃないですか。
私自身は、これまで2回くらい、それまでの友人関係をバッサリ切り捨ててしまったことがあるので、爽香の人間関係がうらやましいなって思ったりもします。
ちなみに、これまでの爽香の人間関係を思い出す助けになるのが、『改訂版 夢色のガイドブック: 爽香読本 杉原爽香、27年の軌跡』です。
これも改訂されてから少し時間が経つので、そろそろ新しいものを期待したいですが、記憶を呼び覚ます助けにはなると思います。
記憶を呼び覚ますのではなく、過去の作品を読んだことがないという方は、ぜひ第一作の『若草色のポシェット 〈杉原爽香15歳の秋〉』から読むことをオススメします。
2度目はなぁと思う作品もありますが、その作品を含めて現在があるので、ぜひ1度は…
ちなみに(が続きますが)、このシリーズ、タイトルには色の名前と物の名前が入っていて、「杉原爽香〇歳の〇」と、最後に春夏秋冬がつくのが特徴。
この春夏秋冬が、物語の大まかなイメージを表していて、春や夏なら暖かく、秋や冬ならちょっと難しい話になっています。
で、最近のタイトルを見返してみると、
『焦茶色のナイトガウン 〈杉原爽香47歳の冬〉』
『黄緑のネームプレート 〈杉原爽香46歳の秋〉』
『灰色のパラダイス 〈杉原爽香45歳の冬〉』
と、今回の『狐色のマフラー 〈杉原爽香48歳の秋〉』まで4作続けて秋か冬。
その前も、『牡丹色のウエストポーチ 〈杉原爽香44歳の春〉』を挟んで、
『栗色のスカーフ 〈杉原爽香43歳の秋〉』
『えんじ色のカーテン 〈杉原爽香42歳の冬〉』
『肌色のポートレート 〈杉原爽香41歳の秋〉』
『新緑色のスクールバス 〈杉原爽香40歳の冬〉』
『オレンジ色のステッキ 〈杉原爽香39歳の秋〉』
『菫色のハンドバッグ 〈杉原爽香38歳の冬〉』
と、6作続けて秋か冬なんです。
そろそろ、春か夏の物語が読みたいなぁなんて…
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