赤川次郎さんの『交差点に眠る』を読みました。
梓悠希は、ちょっとグレていた少女時代、空き家で愛を確かめ合ったあと、数十発の銃弾に倒れた男女を目撃した。
それを機に、人生を変えた悠希は、ファッションデザイナー・梓ゆきとして、成功を勝ち取ろうとしていた。
しかし、またもや発生した発砲事件。そして、成功への階段をともに駆け上がってきたファッションモデル・ナターシャの周りで起きる、暴力団の抗争に巻き込まれていく。
一歩間違えれば、「こんなにうまくいくもんか」と、本を放り出されてしまいかねないような、暴力団の抗争の展開。
そこを、多少の無理を感じつつも、読者に受け入れさせてしまうところが、赤川次郎さんらしい作品です。
正直言うと、赤川次郎さんに、暴力団によるドンパチは似合わないと思っています。
もっと、人の心の中に入り込んだような作品が似合うんじゃないかと。
だから、この作品でも、暴力団による抗争のシーンでも、人間の心理が重要なカギに。
暴力団だって、結局は人間なのだから、行き着くところは心なのかも知れませんが、私の勝手なイメージとは、ちょっと差異が…
赤川次郎さんが書く暴力団といえば、やっぱり『セーラー服と機関銃』の目高組ぐらいが良いのかなぁと思ってしまいます。
ヒロインは、29歳のファッションデザイナー・梓悠希。
赤川次郎さんの作品としては、少し高めの年齢設定です。
赤川次郎さんがよく用いる、女子高生が子どもと大人の境目であれば、この29歳という年齢は、怖いもの知らずの若さと、大人としての落ち着きの境目。その設定がうまく活かされているなと感じました。
これまでの赤川次郎さんの作品であれば、”あの人”は最後に死ぬ展開になりそうなところですが、この作品では、生き残って、新たな人生を模索していくようです。
この、生きて、人生を切り拓くというところが、この作品の1章から描かれたテーマなのかなと思いました。
スタジオジブリの映画『もののけ姫』のキャッチコピーが「生きろ。」でしたが、それに近いものを感じたかな。
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