赤川次郎さんの『涙のような雨が降る』を読みました。
ケンカで相手を怪我させて、少年院に入ったことのある少女・尾崎由美は、大金持ちの実業家・風祭信代の孫・中川歩美として、風祭家で生活を送ることになる。
風祭家の周囲には、風祭家のスキャンダルを狙うフリーライターの栗山愛子や、信代の遺産を狙い、歩美を風祭家に送り込んだ親戚たちの姿が…
学校では、演劇部のヒロインが、教師と駆け落ちしてしまうなど、由美の周りで、様々な人の思惑が交錯する。
それらを仲裁していくことで、ひっそりと生きていくはずだった由美は、周囲から一目を置かれる存在になってしまう。
少年院に入ったことのある少女を、ワルとして扱うのではなく、周りの少女たちよりも、はるかに豊かな人生経験を積んだ人間として扱っている点が、この作品のミソでしょう。
ただ、その人生経験が故に、大人でも真似できないような言動を見せることになってしまい、由美は目立った存在になってしまいます。
本当なら、ひっそりと風祭家に潜んで、次の指示を待つ予定だったのに、大人たちの誤った行動に、一言もの申さずにいられないところが、由美の人となりを表しているでしょうか。
大人が子供から何かを教えられるというのは、赤川次郎さんの作品によくあるパターンですが、この作品もその中の1つに数えられると思います。
当然、由美がそのまま歩美として、平穏に暮らしていけるはずがないのですが、そこをどう纏めるか。由美と、周囲の大人たちの行動に、要注目。
個人的には、結構オススメです。
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