内田康夫さんの『琥珀の道(アーバンロード)殺人事件』を読みました。
あらすじ
浅見は戸塚警察署の橋本警部の訪問を受ける。通り魔殺人事件として捜査中の事件が、怨恨によるものだというのだ。しかも、その理由は被害者の表情にあるという。
しばらくすると、八年前に通り魔殺人の被害者が撮った記念写真に共に写っていた男性が三陸海岸の崖から転落死を遂げる。橋本警部からの依頼を受けた浅見は岩手へとソアラを走らせる。
感想
この作品で内田康夫さんは、崖で転落した男性の事件のトリックを、物語の中程で呆気ないほど簡単に解いてしまう。『讃岐路殺人事件』のダイイングメッセージもそうだったが内田さんはせっかく用意したトリックや謎を最後まで残さずにあっさりと解いてしまうことがある。読んでいる方としては「何をやっているんだろう?」と呆れると共に、そこに何か落とし穴が用意されているのではないだろうかと不安にもなる。
私の中では“完全犯罪”が似合わないイメージのある内田康夫さんであるが、崖からの転落死を装うトリックなど、プロットを立てて執筆を行えば、ミステリー史に残るトリックをいくつも生み出せたのではないかと思うのである。
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