内田康夫さんの『高千穂伝説殺人事件』を読みました。
ヴァイオリニストの本沢千恵子の父誠一が失踪。書斎の机の引き出しの中に隠されていた留守番電話には「イスルギです。ブツはニュータバルからタカチホへ。運んだのはノベウン。受け取ったのは市川」と吹き込まれていました。
さらに、誠一の同僚を名乗る男が高千穂で不審死を遂げる。高千穂へ向かった千恵子と浅見ですが、さらなる事件へと巻き込まれていきます。
スリルとサスペンスに満ちた作品に仕上がっていて、特に終盤はぐいぐいと読者を惹きつける力強さがあります。失踪した本沢千恵子の父・誠一は生きているのか、死んでいるのか、読者をじらしてくれることもページをめくる手が早くなる一因になっています。
しかし、ミステリーとして読んだ場合、犯行の方法や動機などが曖昧なままになってしまっている感もいなめません。特に帆村議員が自殺だったのか他殺だったのかについては最後までわからない(のだと思う)。それぞれの事件の謎を追い求めていると消化不良になってしまいます。美しいヒロインに無粋な殺人の話は不要ということでしょうか。本沢千恵子という魅力的なヒロインの存在によって、作品全体に華やいだ雰囲気がもたらされていると言えるでしょう。
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