赤川次郎さんの『三毛猫ホームズの回り舞台』を読みました。
第1作の『三毛猫ホームズの推理』を読んだのは20年あまり前のことですが、猫を探偵役にするという奇抜なアイデアと、奇想天外な密室トリック、実りそうで実らない片山刑事の恋は何度読んでも飽きません。
三毛猫シリーズもこの作品で50冊目になるそうです。『三毛猫ホームズの推理』が発表されたのが1978年とのことですから、それから四半世紀。ホームズたちを取り巻く環境も変化しています。その中でも特に目立つのがIT技術の進化です。例えば、登場人物が携帯電話やスマホを持つようになっているのはもちろん、SNSと思われるツールの利用、車でのカーナビの使用など25年前では考えられなかったツールが作中に取り入れられています。
その一方で、これらのツールの危険性も暗に取り上げられていて、カーナビが通行不可能な道に案内したり(今の日本のディジタル地図ではほとんど起きないと思いますが…)、インターネット上で誤った情報が独り歩きしてしまったり。
情報工学を専攻していた私としては、複雑な思いもあるのですが、確かに今の社会が抱えている問題として認めざるを得なかったり。
ストーリーの方は50冊目だからといって特に変わったところはなく、いつものように話が進んでいきます。
舞台は赤川次郎さんが好きな演劇。そして、たびたび登場してくるTV局です。
赤川次郎さんの得意分野ということもあるのでしょうか、いつも以上に安定感があります。
特に凝ったトリックがあるわけでもなく、謎解きらしい謎解きがあるわけでもないのですが、演出が素晴らしい。映像化したらさぞかし絵になると思います。
ただ…
三毛猫ホームズシリーズって映像化が難しいんですよね。なんせ、猫に探偵役をしてもらわないといけませんから。過去にも何作か映像化されていますが、主に片山刑事が謎解きを行うように書き換えられていたと記憶しています。
他にも映像化された赤川次郎さんの作品は数多くありますが、あまりにも原作からかけ離れたものが多くていつも残念に思います。プロローグは映像として組み立ててから書き始めるという映画大好きな赤川次郎さん。そのまま素直に映像化したらいい作品になると思うんですけどね…
コメント