モータリングライターの世良耕太さんが記された『トヨタル・マン24時間レース制覇までの4551日』を読みました。
記憶にも新しいトヨタのル・マン24時間レース初制覇までの道のりが書かれた本です。
ちなみに、トヨタはル・マン初制覇までに4551日かかりましたが、この本はレースから31日後に発行されています。
レース前から準備はしていたのでしょうが、やっぱり驚異的です。
私がル・マン24時間レースを知ったのはサードがトヨタ94C-Vで2位になった1994年。それ以降のル・マン24時間レースは情報を集め続けていましたし、2012年にハイブリッド・マシンTS030でルマンに戻ってきてからの活動はTV、インターネットで見続けてきました。
しかし、この本のようにマシンの開発やレギュレーションの変化、レースの結果などが1冊に纏められると記憶も蘇ってきますし、こういう背景があったんだとか、こんなことになっていたんだということがわかって面白いです。
特に、トラブルの原因などは、レースが終わり、開発拠点に持ち帰り、原因を特定し…となると、なかなか報道されなくなってしまいます。
また、恥ずかしながら「エアリストリクター」と「燃料リストリクター」の違いをちゃんと理解することができました。
ル・マンでも、SUPER GTでも、以前はエアリストリクターを使用していましたが、近年は燃料リストリクターを使用してパフォーマンスの統一を計っています。
エアリストリクターを用いた場合、エンジンに供給できる空気の量に制限を加えます。エンジンは空気と燃料を混ぜた混合気を燃焼させて動力を得ますが、そのうちの空気の量を決めるわけです。
この場合、いかに少ない空気でたくさんの燃料を燃やすかということが開発のポイントになります。
極端な話、燃え切らないぐらいの燃料をエンジン内に送り込んでも良いわけです(まぁ、パフォーマンスは上がらないでしょうが…)。
少し考えてみると、いかにたくさんの燃料を燃やすかということが開発のポイントになるということは市販車の開発の方向性とは逆行しているように思えてきます。
そのためなのかどうなのかは勉強不足で良くわかりませんが、近年使用されている燃料リストリクターは、エンジンに送り込める燃料の量に制限を加えます。
今度はいかに少ない燃料で大きな動力を得るかということが開発のポイントになります。
これなら現在の市販車の開発の方向性とも合っていますね。
薄い混合気を燃焼室内に送り込むリーンバーンエンジンなど、今後市販車に使えそうな技術がたくさん生まれそうです。
そういう客観的な情報と、現トヨタWECチーム代表&TMG社長の村田久武氏の目から見た内部の状況が並べて書かれていて、非常にわかりやすいです。
実は、読み始めた時は「読みにくいなぁ」と、「こんな文章をずっと読まされるのか…」と正直ウンザリしたのですが、いつの間にかストレス無く読んでいました。
プロローグの部分だけ何か仕掛けがあったのかなぁ?
ちょっと不思議な本でした。
コメント