女性画家として名を上げていたヨシダカオルの企画展の準備をしながら、恋人との関係や職場の人間関係に悩む、学芸員の貴山史絵がヨシダから得たものとは。
一色さゆりさんの『カンヴァスの恋人たち』を読みました。
あらすじ
白石美術館で非常勤の学芸員として働く貴山史絵は、地元碧波市出身かつ在住の女性画家・ヨシダカヲルの個展を担当することになる。
何度もヨシダのアトリエへ通った史絵は、ヨシダの人間性に惹きつけられていく。
私生活では、東京で同じく学芸員をしている天野雄介と交際しており、32歳を迎え、そろそろ結婚を意識しはじめる。
しかし、定期健康診断で再検査になって婦人科を訪れた史絵は、子宮内膜症と診断される。
医師から不妊の原因にもなると言われ、史絵は動揺する。
感想
一色さゆりさんらしく、美術館での企画展の話が舞台になっているのですが、その舞台の上では様々な人間模様が描かれています。
先日読んだ『飛び石を渡れば』では、もっと芸術にどっぷりとつかった方が一色さゆりさんらしいなぁと思いましたが、今回は純粋に面白いと思いました。
人と人が向き合うと、意見の相違だったり、誤解だったり、様々な感情が沸き起こりますが、そこが繊細に描かれている。
それも、文章で直接的に書かれているのではなく、絵を通して伝えてくるような、そういった描き方がされています。
さらに、2人よりも3人、3人よりも4人の方がより複雑になるのは自明で、そのあたりも素晴らしいなぁと感じました。
美術に関する知識だけではないんだぞという、一色さゆりさんの想いを見た気がしました。
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