アムステルダムで出会ったコロッケの自動販売機、リトアニアで食べたイクラを添えたパンケーキ。モロッコのシャフシャウエンで食べたレモンとチキンのタジン。アイスランドで食べたヨーロッパいち美味しいホットドッグ、氷点下12度のハルビンで食べたアイスキャンデー。
旅は食べものとの出会いであり、人との出会いでもある。
近藤史恵さんの『オーロラが見られなくても』を読みました。
あらすじ
祖母と父の介護が終わり、一息ついた広畠佳奈は、オーロラを見るためにアイスランドを訪れ、ミュージカル俳優の秋月千尋と出会う。
ヨーロッパ一美味しいと言われるホットドッグを食べた2人は、将来について語りはじめる。
感想
料理と人との出会い。旅の醍醐味ですよね。
私は人見知りなので、はじめての人と話すのは苦手ですが、慣れてしまうとずうずうしくなってしまうのが悪いところ…
一方、食べるのは好きなのですが、これまた1人で知らない店に入るのが苦手なので、旅に出ても現地の美味しい食べものを食べずに帰ってくることがあります。
そんな意味でも、人と食との出会いのありがたみが身に染みて感じられます。
それにしても、近藤史恵さんが書かれる料理の美味しそうなことといったら!
イクラを添えたパンケーキだけは「ん?」って感じでしたが、ほかの料理はそれを食べに行くだけの価値がありそうだなぁと思わされるものでした。
東京で働いていた数年間は、各国の料理のお店を廻っていたのですが、今住んでいるところの周りには、あまりそういったお店がないんですよね。
探せばあるんだろうけど、と思いつつ、両親が一緒だとどうしても無難な料理になってしまいます。
海外とまではいかないけど、食をテーマにした旅にちょっとでてみるのも良いかも知れませんね。
そんなことを思わされる作品でした。
収録作品
表題作のほか、『遠くの縁側』、『パンケーキとイクラ』、『ジブラルタルで会えたら』、『マイナス十二度のアイスキャンデー』が収められています。
遠くの縁側
出張先のアムステルダムでバッグをすられた乙葉は、渡航書ができるまでの間1人でアムステルダムに残ることに。
降って湧いたようなアムステルダム観光の最中、コロッケの自動販売機を見つける。
パンケーキとイクラ
ラトビアで働く妹に会う前に、リトアニアに立ち寄った翔太は、イクラが添えられたパンケーキと出会う。
ジブラルタルで会えたら
自分を少し捨てるためにモロッコを訪れた岬は、グラスに溢れんばかりの生のミントに熱く甘い緑茶を注いだミントティーや、レモンとチキンのタジンに出会う。
しかもそこは、親友の優來が新婚旅行で訪れているスペインと、地中海を挟んだ向かい側だった。
マイナス十二度のアイスキャンデー
会社の先輩・郭さんに誘われて訪れた冬のハルビンは、氷点下20度や30度が当たり前。
そんな寒さの中で、ハルビンの人たちはアイスキャンデーを食べるのが好きなのだという。




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