世の中には、生まれながらにして運に見放されている者がいる。
真柴亮はなぜ民間人1人と警察官1人を殺害することになったのか?
亮はなぜ北へと逃亡したのか?
なぜ人質をとって立てこもることになったのか?
東日本大震災直後の東北で、人の命と命を繋ぐストーリー。
柚月裕子さんの『逃亡者は北へ向かう』を読みました。
あらすじ
先輩に連れられて行ったクラブでケンカに巻き込まれた真柴亮は、相手をケガさせてしまい留置場に入れられることに。そんな時、東日本大震災に巻き込まれる。
留置場から出された亮は、襲ってきたケンカ相手のグループのメンバーを返り討ちにしてしまう。
さらに、警察官までを殺害してしまった亮は、冬の東北地方を北へと逃亡する。
感想
「該当作なし」となった第173回直木三十五賞の候補作です。
2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震発生時、私は東京のオフィスでいわき市の会社と電話会議をしていました。
そして、そのまま帰宅難民に…
そのため、リアルタイムで津波の様子だとか、被災地の様子を見ることはありませんでした。
そんなこともあって、私は東日本大震災から目を背けてきたところがあるのですが、この作品では嫌でも向き合うことに。
命の重さだとか、家族の安否もわからないにも関わらず、被災者の支援を行わなければならなかった人たちの心境だとか、そういったものがズシンと胸に響いてきました。
何をやってもうまくいかない男・真柴亮の逃避行を描いた作品ですが、それはどういう断面で東日本大震災を切り取るかといった問題であって、柚月裕子さんが描きたかったのは、「命」だったんじゃないかなと思いました。
物語の展開に少し強引なところも見られましたが、登場人物たちの目を通して見た震災の悲惨さや、それでも強く生きていく姿勢に、感じるものがありました。
機会があれば、ぜひ。




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