どんなに考えても、探しても、人が死んだ理由なんて絶対に見つからないんだよ――。
納棺師、生花装飾技能士、遺品整理士が集う小さな会社〈C・F・C〉は4人の新入社員を迎えた。
座学研修を受け持った有明が初日に新入社員たちに見せたのは、轢死体の復元処置だった。
身体や顔の損傷が激しいご遺体を復元する通称「二課」に所属する社員は、それぞれに心に傷を抱いていた。
朝宮夕さんの『アフターブルー』を読みました。
あらすじ
納棺師、生花装飾技能士、遺品整理士が集う小さな会社〈C・F・C〉。
中でも、身体や顔の損傷が激しいご遺体を復元する通称「二課」は、新入社員が定着せず、人手不足が常態化していた。
そんな「二課」に、期待の新卒新入社員が入ってきた。
しかし、「二課」のメンバーはそれぞれに心に傷を抱いていた。
感想
第19回小説現代長編新人賞を受賞した作品です。
納棺師。その中でも「二課」の仕事は、私にはとても勤まりそうにありません。
そんなことを言うと、課長の有明に怒られそうですが、最初の2週間で辞めるどころか、はじめからそんな職種を選ばないだろうなと…
でも、こういった仕事をされている方がおられるからこそ、社会が回っているんだなと思うと、頭が上がりません。
おそらく、扱うご遺体の状態や表現はギリギリ。
これ以上書いてしまうと、途中で脱落してしまう人が続出してしまうのではないでしょうか。
話を読み進めていくうちに、「二課」のメンバーがそれぞれに抱えている心の傷が明らかに…
そんな心の傷に”かさぶた”を張る手伝いを新入社員の東雲がしていくのですが、東雲自身も傷を負っていないわけではなく。
最後をどうやって締めるのかな?と思いながら読んでいたのですが、なるほど、そうきましたか。
余韻を残す終わり方で、最近は結末を押し付けられる作品ばかり読んでいたなと、久しぶりの感覚に酔いしれました。
タイトルは『アフターブルー』ですが、ブルーというと、空や海を指す場合もありますし、気分が落ち込んだ状態を指すこともあります。
空が暮れていくという意味、うつ状態から寛解するという意味、どちらもストーリーにあっていて、上手いタイトルだなと思いました。
ご遺体の復元というのが、得意、不得意ありそうですが、個人的には良い作品だと思いました。
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