どうしても、直木賞が欲しい
ベストセラー作家の天羽カインは、直木賞の最終候補に残るも、受賞には手が届かないでいた。
3度目の選考漏れを経験したあと、編集者の緒沢千紘と徹底的に新作のブラッシュアップを行う。
過去一の出来になった作品は、4度目の直木賞最終候補に選ばれるが…
あらすじ
ベストセラー作家の天羽カインは、過去2度直木賞の最終候補に残りながらも、受賞に至っていなかった。
3回目に受賞を逃したあと、気性が激しく友人を作れない性格のカインは〈南十字書房〉の編集者・緒沢千紘と信頼関係を築くことに成功し、二人三脚で新作を徹底的にブラッシュアップして、4度目の正直を狙う。
感想
この作家さん苦手。この人の話を読むのは苦行!
というのが第1印象。
もっとも、ここで言う作家は村山由佳さんではなく、天羽カインの方なんですけどね。
村山由佳さんの作品はこれまで読んだことがなかったのですが、この作品のあらすじを読んで、ぜひ読みたいと思い手に取りました。
直木賞というと、つい先日発表された2025年上半期の受賞作品が、芥川賞とともに「該当作品なし」となったのが記憶に新しいのですが、芥川賞、本屋大賞とならんで一般紙やテレビのニュースなどでも取り上げられる権威のある賞。
作家の誰もが夢見る賞と言っても過言ではないと思います(執筆に専念したいと選考を辞退された方もおられるようですが)。
もし私が作家になったとしたら(なれたとしたらですが…)、やはり目指す賞なんだと思います。
では、具体的に作家にとって直木賞とは何なのかという疑問については、作品の中で村山由佳さん流の解釈が示されています。
そんな直木賞を目指す天羽カインを追ったのがこの作品。
はじめはカインの気性の激しさに閉口しましたが、千紘と信頼関係を築くうちに読みやすく。
そこからは一気読みでした。
作家・天羽カインと、人間・天野佳代子の使い分けも上手さが光っていました。
直木賞の裏舞台を描くという、ある意味勇気が必要なことに出ただけのことはあって、素晴らしい作品になっていました(ちなみに、村山由佳さんは第129回(2003年上半期)に『星々の舟』で直木賞を受賞)。
直木賞の選考過程だとか、編集者の役割といったことも、この作品を読んで理解することができました。
0を1にするのが作家で、1を100に近づけるのが編集者の役割…
本を1冊刊行するために、これだけの人が動いているのだと考えると、これから本の読み方が変わってきてしまいそうな気がします。
ブログだって人に読んでもらうものなので、それくらいの熱量が必要なのかな?
私にはまだその自覚が足りていませんが…
結末はある程度想定内でしたが、その中で最も意外なところに着地したといった感じでしょうか。
オススメです!
コメント