ロンドン警視庁のウォーウィック捜査警部らは、王室警護本部による犯罪行為の摘発に向けた準備を進める。
そんな時、リビアのテロリストがイギリスに入国するとの情報をキャッチする。
水際でテロリストを逮捕し、ウォーウィックの仇敵である美術品窃盗詐欺師のマイルズの協力もあって、テロ行為を防ぐことに成功するが、テロリストの最大の目標はイギリス王室だった。
ジェフリー・アーチャーの『狙われた英国の薔薇 ロンドン警視庁王室警護本部』を読みました。
あらすじ
ロンドン警視庁(スコットランドヤード)のウィリアム・ウォーウィック捜査警部らは、同王室警護本部の腐敗を暴くことに成功する。
ダイアナ皇太子妃の警護係として、ウォーウィックと同じ班に属すロス・ホーガンが着任するが、その頃、イギリスはリビアのテロリストたちの標的になっていた。
コンサートホールでの自爆テロは、ウォーウィックの仇敵で美術品窃盗詐欺師のマイルズからの密告により未遂に終わるが、テロリストの最大の目標はイギリス王室だった。
感想
「ウィリアム・ウォーウィックシリーズ」の第5作です。
2024/10/24の発売日当日に購入したのですが、長らく”積ん読”状態になっていました…
ちょうど、ブログの引っ越しをして読書の時間が削られていた時期で、図書館で借りた本は期限があるしってことで、ついつい後回しになってしまっていました。
ブログの引っ越しの方はある程度終わりが見えてきましたし、図書館で借りる本の冊数も、今の読書ペースに合って来たので、ようやく手に取ることができました。
この「ウィリアム・ウォーウィックシリーズ」は、現在ハーパーコリンズ・ジャパンから新装版が順次発売されている「クリフトン年代記」の中で、主人公のハリーが執筆した警察小説を現実の物にした、広い意味での作中作のような作品です。
第1作『レンブラントをとり返せ ―ロンドン警視庁美術骨董捜査班―』では巡査だったウォーウィックは、作品ごとに昇進し、前作『運命の時計が回るとき ロンドン警視庁未解決殺人事件特別捜査班』で史上最速のペースで捜査警部になっています。
今回の作品には、イギリスを代表するといっても過言ではないであろう、エリザベス女王、ダイアナ皇太子妃、マーガレット・サッチャーという3人の女性が登場します。
実在する王室の人間を実名で登場させるというのは、日本のフィクション小説(日本では皇室)ではちょっと考えられないことではないでしょうか。
しかも、ダイアナ皇太子妃に関しては、その浮気癖まで…
でも、ダイアナ皇太子妃の登場は、私の年代以上の人たちには、ちょっと嬉しい話ではないでしょうか。
イギリスの皇太子妃といえばダイアナですし、モナコの公妃といえばグレース・ケリー、ヨーロッパ最古の王室の王女といえばアン(オードリー・ヘップバーン:『ローマの休日』)ですよね。
ダイアナさん以外はリアルタイムではありませんが…
話としては面白いのですが、最盛期のジェフリー・アーチャーの作品と比較すると、キレが落ちているかなと感じました。
前作でも同じような印象を受けたのですが、ピンチでは息を呑むような、落ち込む場面ではこちらまで落ち込むような、喜ぶ場面ではこちらまで嬉しくなるような感情の起伏がもっとあったと思うんです。
第1作でウォーウィックが働いた不貞行為や、前作の終わりでウォーウィックらがスペインで当局の許可を得ずにマイルズの身柄を確保し、イギリスに連れ帰ったことなども今のところおとがめなし。
以前のジェフリー・アーチャーなら、ウォーウィックは何度も窮地に立たされていると思うんですけどね。
また、裁判の場面も楽しみにしていたのですが、ちょっと拍子抜けでした。
もっとも、もっと面白いジェフリー・アーチャーの作品を知っているからこその感想なのかも知れませんが…
ストーリーとは関係ないのですが、会議の席上で「情報を更新してください」という言い方が良いなって思いました。
「最新の情報を伝えてください」ではなく、「情報を更新してください」。
これまでの情報とどこが変わったかに重点を置いた訊き方だと思いません?
この作品はシリーズ5作目ですが、本国ではすでに7作目まで出版されており、現在8作目を執筆中だそうです。
そして、噂によると、その8作目が最終話になるとか…
御年84歳のジェフリー・アーチャーですから、このシリーズが始まったときには、あらぬ心配をしてしまいましたが、重鎮は健在のようです。
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