中山七里さんの『月光のスティグマ』を読みました。
あらすじ
隣同士の家に住む神川淳平と双子の姉妹・八重樫麻衣と優衣は、兄弟同然に育った。
しかし、中学3年生になった3人を、阪神淡路大震災が襲い、淳平と優衣は震災孤児になり、離ればなれになってしまう。
東京の大学を卒業し、検察官になった淳平は、衆議院議員の是枝孝政を内偵することになるが、是枝議員の私設秘書を務めていたのが、八重樫優衣だった。
感想
中山七里さんの作品としては珍しく、主人公たちの半生を描いた作品になっています。
はじめは、私の地元である神戸が舞台になっているのに気を良くして、こんな青春もいいなぁなんて思いながら読んでいたのですが、そこで突如発生する阪神淡路大震災。
なんとか生き延びた淳平と優衣でしたが、180度ひっくり返ったような人生を歩むことになってしまいます。
そして、30歳になった淳平と優衣を襲うのが、東日本大震災。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)とまで言えるのかどうかはわかりませんが、心に染みついた恐怖と対峙することになります。
実は、私も阪神淡路大震災と東日本大震災の両方を経験しているんですよね。
どちらも直撃は免れましたが、阪神淡路大震災のときは兵庫県内に住んでいて、布団の中から本棚から本が落ちていくのを見ていました。
東日本大震災のときは関東にいて、会社で一夜を明かしたり、計画停電も経験しました。
中山七里さんがどのような状況でこれらの震災を体験されたかはわかりませんが、内側から見たような、生々しい描写になっていました。
また、実際にあったことなのかどうかはわかりませんが、震災孤児への奨学金と偽って政治資金を調達しようとする動きに対する怒りは、本物のように感じられました。
双子の姉妹・麻衣と優衣と淳平のほんわかとした雰囲気だった作品が、阪神淡路大震災を機に突然ピンと空気が張り詰めたように豹変。
双子というところもうまく使っていましたが、これに関してはもう少し臭わせても良かったんじゃないかなぁと。
子供の時の約束を引きずりながら、それぞれの立場で歩いていく部分などは、読んでいても少し胸が苦しくなるほどでした。
物語の最後は、中山七里さんらしく、想像を超える出来事の連続。
読み終わったときに、思わず大きくため息をついてしまいました。
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