赤川次郎さんの『黒い壁』を読みました。
会社員の利根貞男は、ドイツに行っていた野川卓也からベルリンの壁の破片をもらう。
翌週、利根は、帰り道の途中、1人の女性が地面に這って、救いを求める手を差し伸べているのを見かけた。
利根が女性を助けようとすると、繰り返し銃声が。
女性は利根にペンダントを渡した後、絶命した。
意識を失った利根が再び目を覚ますと、女性の死体や、女性の下に流れ出ていた血、道路にめり込んだはずの銃弾の痕はすべて消え去っていた。
ベルリンの壁を題材にした作品になっています。
狭義の意味では、野川から利根が受け取ったベルリンの壁の破片そのもの。広義の意味ではベルリンの壁によって分断された東西ドイツです。
この作品が書かれたのは1999年。ベルリンの壁崩壊から10年後のことでした。
私自身、ドイツが東西に分かれていた頃の記憶はほとんどなく、ベルリンの壁が壊されたというニュースを少し記憶している程度です。
おそらく、子供たちの世代になると、年表の中にある1行になっているのでしょう。
そんな、東西冷戦を知らない世代の子供たちが、当時のことに興味を持つきっかけになれば良いなと思いながら読ませていただきました。
ジャンルとしてはホラー系ミステリーになるのでしょうが、ホラーが苦手な私でも大丈夫。
どちらかというと、ファンタジーに近いのかな?と思いながら読んでいました。
常識では考えられないことが起きるのですが、それが怖いというよりは、人々の切なる願いが込められているような気がしました。
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