赤川次郎さんの『たそがれの侵入者』を読みました。
あらすじ
泥棒の久米明日香は高級老人ホーム〈いこいの園〉に住む野々山あすかをひょんなことで知る。
次なる仕事先を〈いこいの園〉に定めた久米だったが、セキュリティが厳しく断念するが、久米とあすかは、あすかの息子の恋人絡みのもめ事をきっかけに顔なじみになる。
久米のもとには、かつての仕事仲間・佐木が、脱獄したとの連絡が入ったうえ、娘のあかねが関係した高校教師の八木が教え子を殺害した事件などに巻き込まれていく。
感想
あらかじめあらすじを読んで想像していた内容とは、ちょっと違った作品になっていました。
まず、あすかは令嬢と呼ぶのがふさわしいような、若い女性を想像していたのですが、実際には80歳近いおばあさん。
そして、明日香は、30過ぎのダンディな泥棒を想像していたのですが、50歳くらいのおじさん。
いつもの赤川次郎さんの設定とはちょっと違うぞと思ったのですが、明日香とあすかが年齢を重ねている分、言葉の端々に重みが感じられました。
あすかの言葉で1つ良いなと思ったのが、
「男の子と違って、女の子は十代の初めで生理が来てからは、毎月その度に自分が女だということを自覚させられる。男の子より早く大人になるのは当たり前なのよ」
という言葉。
女の子の気持ちはわかりませんが、確かにそうなのかも知れないなぁと感心してしまいました。
赤川次郎さんが、少女を主人公に選ぶことが多いのも、このあたりが関係しているのかも知れません。
今回はマークしなければならない要注意人物が3人いるのですが、気がつくとマークが薄くなっている人物が出てきてしまいます。
しかし、それをさりげなく思い出させて次の展開へ持ち込むテクニックが秀逸だと感じました。
何を考えているのかわからない人間を3人も出しておきながら、上手く纏め上げたなぁと、今さらながら赤川次郎さんの筆力に感心させられました。
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