赤川次郎さんの『怪盗の有給休暇』を読みました。
あらすじ
かつて〈黒猫〉と呼ばれた怪盗・久野原僚は、〈月のしずく〉と名前がついたダイヤモンドを狙って、宝石商の八木春之介の屋敷に忍び込んだ。
しかし、同じ晩にもう一人のコソ泥が忍び込んで捕まったが、その共犯者として屋敷で働く江田という若者が疑われ、自殺してしまった。
八木は〈月のしずく〉が盗まれたと言っているが、久野原が盗んだ宝石の中に〈月のしずく〉は含まれていなかった。
日本を離れることにした久野原は、部下の田中和子を連れてヨーロッパへ向かった。
その旅先で知り合ったのが、3人の女子大生、島崎美鈴、木村涼子、関口ゆかりだった。
そして、美鈴の叔母が、久野原の昔の恋人・秋月沙織だった。
女子大生3名を誘って参加したパーティーで、宝石の盗難事件が起きたことを悟った久野原は、すぐに日本へ引き返す。
感想
「これぞ、赤川次郎!」と、手を打ちたくなるような作品です。
でも、赤川次郎さんが持つ数ある引き出しの、いくつかを開けただけに過ぎません。
しかし、赤川次郎さんの魅力が詰まった1冊と言って間違いないでしょう。
主人公の久野原僚は、「夫は泥棒、妻は刑事シリーズ」の今野淳一の2、30年後を描いたような、知的で器用な人物。
度胸もあるし、ものごとの流れを読む力もあって、数々の修羅場をくぐり抜けてきたんだろうなと思わせます。
赤川次郎さんが得意としている、ドイツ語圏の国も登場。
ケーキが日本の倍くらいの大きさがあるとか、ライン川に滝があるとか、向こうへ行った人でないとわからないようなうんちくに感心させられます。
今回は、赤川次郎さんの得意分野ばかりを集めたような作品。
おそらく、書いていても楽しかったんじゃないかなって思います。
赤川次郎さんにとっても”息抜き”だったのでは?と思えるような、肩の力が抜けた作品になっています。
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