稲泉連さんの『豊田章男が愛したテストドライバー』を読みました。
現トヨタ社長の豊田章男氏と、氏が弟子入りしたというトヨタ伝説のテストドライバー、故・成瀬弘氏のエピソードです。
私は、正直豊田章男氏がトヨタの社長に就任した時、あれだけの大企業の社長がドライバーとして(命の危険がある)レースに参加するのはいかがなものかと、否定的な考え方をしていました。
しかし、この成瀬弘氏とのエピソードを聞いて180度見方が変わったといっても過言ではありません。
2016年3月にこの本が発売されてから、ずっと読みたい、読みたいと思っていたのですが、今頃になってようやく手にすることができました。
ただ、実際に読んでみると…
なんと言うのでしょうか… 全体的にふわふわしていると言うか、焦点が定まっていないと言うか…
成瀬弘氏の周囲の人たちの話を元に、氏に関するエピソードが順に紹介されていて、1つ1つは良い話なのですが、それをつなげた時にまとまりがないと言えば良いのでしょうか。
ノンフィクション作家として優秀な方のようですが、成瀬弘という人を語るのであれば、もっと泥臭い語り口の方が似合うのではないかと私は思いました。
「運転のことも分からない人に、クルマのことをああだこうだと言われたくない」
成瀬弘氏が豊田章男氏に初めて会った時に言った言葉がこの本の根幹だと私は思うんです。
でも、最後まで読んでも、なぜ成瀬弘氏がそんな言葉を発したのかということがよくわかりません。まぁ、まったく分からないというわけではないのですが、最後になってのこと。私がもしこの話を書くのであれば、この言葉に至るまでのやりとりを、本を読み進めていくうちにその意味がわかるような書き方でプロローグに記すかなぁなんてことを思いながら読んでいました。
その根幹部分がよくわからないまま話が進んでいくので、不安を感じながら読むことになったのかな?
大好きなエピソードだけに、ちょっと残念だったかなぁと思ってしまいました。
でも、成瀬弘氏と豊田章男氏の師弟愛がよくわかる本でしたよ。
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