【読書】内田康夫『沃野の伝説』
「あれはどうなってしまったのかしら?」浅見家の夕餉のテーブルで母・雪江が呟いたのが事件の始まりだった。米穀配給のために各世帯に配布されていた「米穀通帳」なるものがいつの間にか使用されなくなっているというのだ。消えてしまった米穀通帳の行方についての雪江のこだわりは強く、食料卸協同組合の坂本義人に問い合わせる。しかし、その数日後、その坂本の遺体が京浜島の海岸に打ち上げられた。雪江に事件の捜査を命じられた浅見は喜び勇んで警察署に乗り込むが、すでに容疑者は絞り込まれていた。帰宅した浅見を待ち受けていたのは米屋から届いたばかりの米に混じっていたコクゾウムシだった。やがて事件はヤミ米事件へと繋がっていって…