レビュー

├ 貴志祐介

【読書】貴志祐介『硝子のハンマー』

日曜日の昼下がり、ビルの12階にある介護サービス会社の社長室で、社長が倒れているのを、窓の清掃をしていた男性が発見した。エレベーターは暗証番号を入れなければ12階に止まらず、廊下には監視カメラ、窓には防弾硝子がはめられていた。当時、社長は昼寝中。副社長は外出中で、直接社長室に入ることができる専務室で昼寝をしていた専務が、社長殺害の容疑で逮捕される。弁護団の1人、青砥純子は、防犯コンサルタントの榎本径の力を借りて、専務の無実を証明しようとする。
└ 米澤穂信

【読書】米澤穂信『儚い羊たちの祝宴』

大寺は、夏という厨娘を雇った。夏は宴の料理を作るのが専門で、普段の食事は作らないという。さらに、6人分の料理を作るために、羊の頭を12頭分、長葱を10kgなど、尋常ではない量の食材を毎回仕入れる。
├ 小路幸也

【読書】小路幸也『オール・マイ・ラビング』

〈東京バンドワゴン〉の店主・堀田勘一は、常連客の茅野とともに、元セドリ屋のネズミの墓参りに行くことになった。茅野の甥・靖祐が同行することになったが、靖祐は大学サークルの夏合宿で、不思議な体験をしたという。寺で順番に物語を1つずつ交代で読んでいったのだが、はじめは存在しなかった百話目がいつの間にか出現し、その内容が靖祐の実体験に基づくものだったという。
├ 今村昌弘

【読書】今村昌弘『でぃすぺる』

小学6年生の木島悠介は、2学期の係決めで掲示係に立候補した。目的は、大好きなオカルトを壁新聞にすること。ところが、委員長に立候補すると目されていた波多野沙月と、今年転校してきた畑美奈も同じ掲示係に。沙月は、1年前に殺害された従姉・真理子の犯人探しをしたいと考えていた。真理子は生前、奥郷町の七不思議を6番まで書き記していて、7個目を知ると死ぬと言い残していた。
├ 濱嘉之

【読書】濱嘉之『国家簒奪』

組で御法度となっている覚醒剤取引きに手を出した花沢組の若頭・大場が、アタッシュケースに仕込まれた爆弾で殺害された。一方、ユーロ建ての定期個人年金保険の個人情報が流出し、この契約者に対する特殊詐欺が急増していた。日本の非合法組織に加え、チャイニーズマフィア、コリアンマフィアの動きに、青山望ら同期カルテットが対峙する。
├ スティーヴン・キング

【読書】スティーヴン・キング『11/22/63』

英語教師のジェイク・エピングは、レストランの店主アル・テンプルトンから、店の食品庫を見せられる。そこには、1958年9月9日正午2分前に繋がる"穴"があった!過去でどれだけの期間過ごそうとも、再び穴を通って2011年に帰ってくれば、過去へと旅だった2分後に戻ってこれるが、相応の歳を重ねることになる。アルは、末期の肺がんを患った自身に変わって、この穴を使って、ケネディ暗殺事件を防ぎ、歴史を変えてほしいとジェイクに依頼する。
├ 下村敦史

【読書】下村敦史『ヴィクトリアン・ホテル』

開業から100年を迎え、改築のためにいったんその歴史に幕を下ろすことになったヴィクトリアン・ホテル。このホテルに、女優や新人作家、スリ、心中を考える夫婦らが集まってくる。彼らが交錯したのちに生まれるものとは。
├ 秋吉理香子

【読書】[オススメ]秋吉理香子『聖母』

子を思う母は強し。我が子可愛さに、近所に住む変質者の尻尾を掴もうとする母親。我が子のためなら犯罪もいとわない母親…第3者の力が働いているとしか思えない状況。その第3者とは誰?その目的は?違和感と疑問を抱きながら読み進めるという、常に不安を感じながらの読書の先に待っている結末とは?最後の最後ですべてがひっくり返る、2度読み必須の物語。
└ 中山七里

【読書】中山七里『いまこそガーシュウィン』

ショパンコンクール入賞者のエドワード・オルソンは、人種差別が激化する母国アメリカを憂い、カーネギーホールでのコンサートで、ガーシュウィン作曲の『ラプソディ・イン・ブルー』を演奏しようと考える。さらに、集客力を懸念するマネージャーのセリーナに対し、同じくショパンコンクールファイナリストの岬洋介との2台ピアノを提案する。一方、殺し屋の〈愛国者〉は、新大統領の暗殺依頼を受ける。
├ 辻村深月

【読書】辻村深月『かがみの孤城』

中学生になった安西こころは、友人とうまくいかなくて不登校になってしまった。〈こころの教室〉というスクールに通うことも考えたが、朝になるとお腹が痛くなってしまう。そんなある日、部屋に置かれた姿見が光り出す。姿見をくぐると城のような建物に繋がっており、そこには、こころのように中学校に通うのが辛くなった子供たち6人が待っていた。
├ 小路幸也

【読書】小路幸也『花咲小路二丁目の花乃子さん』

井筒めいは、いじめが原因で高校をやめ、従姉の韮山花乃子が営む花屋で働きながら、高卒の資格を取るための勉強をすることにした。両親を事故で亡くし、十代で店を継いだ花乃子は、訳ありの客が花を買いに来ると、それを察してしまうという特殊な能力を持っていて、花言葉に込めた思いでお手伝いをすることがあった。
├ 石川智健

【読書】石川智健『エウレカの確率 経済学捜査官 伏見真守』

3人の女性が殺害される連続殺人事件が発生した。最初の事件から1ヶ月、捜査本部に暗雲が立ち込め始めるころ、2人の捜査官が加わった。1人はプロファイリングを専門とする盛崎一臣、もう1人は行動経済学者の伏見真守だった。伏見は刑事の木下麻耶を相棒に選び、さっそく捜査に取り掛かる。
├ 大倉崇裕

【読書】大倉崇裕『秋霧』

月島で何でも屋を営む倉持に、新しい依頼が舞い込んだ。病院に入院中の会社会長・上尾誠三から、天狗岳登山の様子を動画に収めてきてほしいとの依頼だ。さっそく、動画を撮影してきた倉持だが、上尾にDVDを渡して帰宅する途中、3人の男女に拉致されてしまう。その窮地を救ったのが、元自衛隊員の深江信二郎だった。
└ 中山七里

【読書】中山七里『祝祭のハングマン』

建設会社に勤める藤巻亮二が、歩道から車道へ突き飛ばされて死亡した。警視庁捜査一課の刑事・春原瑠衣は、藤巻が勤める会社が、父・誠也も勤めるヤジマ建設で、藤巻と誠也が同期入社であることを知る。さらに、ヤジマ建設の経理課長・須貝謙治が、階段から突き落とされて死亡する。そして、誠也までもが、工事現場でクレーンから落下した鉄骨の下敷きになって死亡してしまう。弔い合戦を挑む瑠衣だが、身内が関わる事件ということで、担当から外されてしまう。
▼著者 タ行

【読書】竹本健治『涙香迷宮』

明治時代の探偵小説作家・黒岩涙香の隠れ家が見つかった。その発掘作業に、棋士の牧場智久とその友人・武藤類子が立ち会うことになった。地下には広間のほか12の部屋があり、各部屋にはいろは四十八文字を1度ずつすべて使う〈いろは歌〉が4つずつ飾られていた。一方、対局のために1度発掘現場を離れた智久は、ふたたび発掘現場を訪れる際に落石に遭い、危うく命を落としかける。
├ 小路幸也

【読書】小路幸也『マイ・ブルー・ヘブン』

戦後間もない昭和20年10月、五条辻政孝子爵の娘・咲智子は、日記帳が入るくらいの大きさの木箱を預けられ、浜松に住む伯母の家に向かうように告げられる。しかし、上野駅前でアメリカ兵に身柄を拘束されそうになる。そこに偶然通りがかり、助けてくれたのが、古書店〈東京バンドワゴン〉の店主・堀田草平の息子・勘一だった。伯母の家にも手配がまわっていることを危惧した草平は、名前をサチに変え、勘一の嫁を装って堀田家に匿うことを提案する。
├ 濱嘉之

【読書】濱嘉之『警視庁情報官 ハニートラップ』

中国に対し、イージス艦関連技術の情報漏洩が発生した。小笠原警察署長の黒田純一は、警視総監の命によって警視庁に呼び戻され、総務部企画課情報室を任される。中国への情報漏洩は、防衛省ルート、警察ルート、政治家ルートで行われており、巧みにハニートラップが取り入れられていた。
├ 下村敦史

【読書】下村敦史『絶声』

父親が死ぬ1時間半前、堂島太平の屋敷で、長女の美智香と後妻の息子・大崎正好が、その時を待ちわびていた。しかし、部屋に入ってきた長男の貴彦が、「父さんが生きている」と言いだした。父・太平は7年前に膵臓がんを患いながら失踪。家庭裁判所による「失踪宣告」によって、死亡が認められる前日、太平のブログに『私はまだ生きている』という記事が更新されたのだった。
▼著者 カ行

【読書】鴨崎暖炉『密室狂乱時代 絶海の孤島と七つのトリック』

現場が密室であれば無罪という判例が出た日本では、密室殺人が横行。〈密室代行業者〉なる職業まで誕生した。そんな中、高校生の葛白香澄は、大富豪・大富ヶ原蒼大依が所有する金網島で開かれる、『密室トリックゲーム』に招待される。しかし、ゲームの最中、参加者たちが実際に密室で殺害されるという事件が発生する。
└ 中山七里

【読書】中山七里『逃亡刑事』

千葉県警組織犯罪対策部の生田忠幸巡査部長が、廃業したカーディーラーの店舗で殺害された。捜査一課の高頭冴子警部は、組織犯罪対策部薬物銃器対策課の玄葉昭一郎課長が、押収した薬物を横流しし、口封じに生田を殺害したという結論に行き着く。しかし、証拠を集めている段階で、逆に玄葉らに証拠を捏造され、冤罪を着せられてしまう。高頭は、生田の殺害現場を目的してしまった少年・御堂猛と共に、大阪のA地区に身を隠す。
├ 小路幸也

【読書】小路幸也『妻と猫と暮らす 蘆野原偲郷』

和野和弥が自宅に帰ると、妻が猫になっていた!妻の優美子は大学教授から、あの娘は少し変わっているが、和弥ならうまくやっていけるのではないかと言われて結婚した相手。和弥は、蘆野原一族の長筋の生まれで、人に厄災をもたらす〈事(こと)〉を祓うことができる力を持っていた。
├ 濱嘉之

【読書】濱嘉之『聖域侵犯』

G7伊勢志摩サミットを控えた英虞湾で、男性の死体が発見された。死体はビニールシートにくるまれ、重りを付けて真珠の養殖筏の下に沈められていた。殺害されたのは、闇経済で生きるブラックジャーナリスト。パナマの法律事務所が作成した通称〈パナマ文書〉との関連も示唆されて…
├ ジェフリー・アーチャー

【読書】ジェフリー・アーチャー『運命の時計が回るとき ロンドン警視庁未解決殺人事件特別捜査班』

ロンドン警視庁のウィリアム・ウォーウィックは、捜査警部昇任後、妻のベスと共に豪華客船でつかの間の休暇を楽しむが、船内で大富豪が後継者争いの最中に急死してしまう。一方、ウィリアムの同僚らは5件の未解決事件の再捜査を開始。宿敵・マイルズ・フォークナーの生存を知ったウィリアムは、休暇を切り上げて捜査に合流する。
├ 下村敦史

【読書】[オススメ]下村敦史『告白の余白』

 京都の人がみんな腹黒いわけじゃないと言われるかも知れませんが、この作品の見所は、全編にわたって、堂々と伏線が張り巡らされているところにあります。伏線なのに伏せられていないなんて!まさか、あのやりとりも伏線の一部だったなんて…伏線が回収されるとき、驚嘆の嵐に見舞われる。開いた口が塞がらなくなった1冊。きっとあなたは、すでに騙されている。